研究概要
研究概要(Research)
私の研究は、当初は行動上の問題をもつ幼児を対象としたソーシャルスキルトレーニングの効果検証から始まりました。行動問題については行動分析のアプローチを用い、その行動の持つ機能を明らかにしたうえで、子どもが機能的に等価なスキルを習得するために有効な方法を検討してきました。その結果、スキルの未学習や誤学習が原因であれば、適切なスキルを習得・活用することによって行動上の問題が改善されることがわかってきました。
一方で、自分の行動や感情を調整することや、他者の立場に立って考えることが苦手な子どもにとっては、スキルの実行そのものが難しい場合もあります。幼児期は自己調整や感情理解が発達する重要な時期であり、その発達は大人のかかわりによって支えられるため、適切なかかわりによって行動上の問題を予防することが可能です。子どもの行動上の問題は、親や保育者による不適切な養育や保育を引き起こす可能性もあるため、私は「親や保育者のどのような特性が子どもの社会性発達を促進し、あるいは妨げるのか」という点を検討しています。そして、子育て中の親や保育者に役立つ情報として発信していきたいと考えています。
さらに、幼児期における実行機能、自己調整、学習への動機づけ、感情理解の発達に注目し、これらが子どもの社会情動的スキルの発達とどのように関連しているのかを明らかにすることを目指しています。これらの関係が解明されれば、社会性発達を意識した子育てや保育実践に貢献できると考えています。
また、発達障害をもつ子どもは社会性の発達がゆるやかであるため、保護者や保育者は子どもとのかかわりに不安を抱きやすいと考えられます。そのため、子どもとの関係性の向上や社会性発達の促進を目的としたプログラムの開発と効果検証にも取り組んでいます。
主な研究テーマ
- 親の特性(子ども観、感情の社会化、マインドフルネスなど)と子どもの社会適応
親の特性が子どもの社会性発達にどのように寄与するかを検討しています。例えば、親の感情表出がポジティブかネガティブかによって子どもの感情発達に影響があるのか、あるいは子どもの社会性発達を促す特性や阻害する特性は何かを明らかにし、不適切な養育の予防につなげることを目指しています。 - 保育者のかかわり(保育者-子ども関係、保育者の社会情動的スキル、マインドフルネス)と子どもの社会情動的スキルの発達
長時間保育を受ける子どもにとって、保育者との関係性は非常に重要です。保育者との関係が親密か、それとも葛藤が多いかによって子どもの社会性発達は異なります。どのようなかかわりが子どもの主体性を育むのかを研究し、不適切な保育の予防にもつなげています。 - 幼児の社会性発達(社会情動的スキル、感情発達、自己調整)
幼児期における自己調整や感情発達、学習動機づけが、どのように相互に関連し合いながら社会情動的スキルを発達させるのかを、縦断的研究によって検証しています。この研究により、社会性発達において「どの時期にどの発達が重要であるか」が明らかとなり、保育実践の検討に役立てることができます。 - ペアレントトレーニングの効果検証(Child-Adult Relationship Enhanced:CARE)
発達障害をもつ子どもの保護者や、子どもとのかかわりに困難を感じている保護者を対象に、子どもとの関係性改善を目的としたプログラムを実施し、その効果を検証しています。自治体と協働した地域支援研究として展開しています。 - CAREの視点を取り入れた保育者研修の効果検証
発達障害をもつ子どもや、子どもとのかかわりに難しさを感じる保育者を対象に、ペアレントトレーニングの視点を取り入れた研修会を開催し、保育者のストレス軽減や保育に対する効力感の向上を検証しています。
科研プロジェクト
- 科学研究費助成事業・基盤研究(C)
「幼児の社会情動的スキルの発達とその規定因の個人差を含めた媒介・調整過程」 - 科学研究費補助金・若手研究(B)[課題番号22730544]
「幼児の問題行動生起プロセスに関する研究―実行機能の調整効果―」 - 科学研究費補助金・若手研究(B)[課題番号26780386]
「抑制機能を媒介とした幼児の問題行動生起過程の検討」 - 科学研究費補助金・基盤研究(C)[課題番号17K04418]
「幼児における社会情動的スキルの発達過程―個人差要因を含めた媒介・調整効果の検討―」 - 科学研究費助成事業・基盤研究(C)
「幼児の社会情動的スキルの規定因とその発達プロセスの解明」